手作業では作りだせない形を求めて
大阪で9月に開催された〝アート&てづくりバザール〟に取材に行ったとき。「繊細でオシャレ!」と、ひときわ印象に残ったのがモノサーカスさんの〝3Dプリントアクセサリー〟。
「3Dプリンターでファッションアクセサリーを作ってるんですよ」とその時、販売ブースにいたモノサーカスの一人、シンさんが教えてくれた。開発から販売までを行っているとのこと。
数年前からよく耳にする3Dプリンター。こんな繊細なアクセサリーが作れるなんて! と驚き、モノサーカスさんに取材をお願いした。
モノサーカスさんは、アーティストのシンさんとデザイナーの武石さん、お二人のチーム。〝アート&デザインでライフスタイルをおもしろく〟をテーマに、3Dプリントアクセサリーなどを開発し、サイトを中心に販売している。
今回は武石さんが取材に対応してくれた。
「二人とも学生時代は芸術大学でそれぞれ建築、油画を専攻していました。互いの技能を活かして、自分たちで作品を作ろう、できることからはじめてみようと思い立ってモノサーカスの活動をスタートしました」
どうして3Dプリンターを使ってみようと思ったのだろうか?
「特に、大学にあったとかではないんですよ。3Dプリンターの時代、というか。まわりでよく聞くようになってたんです」
武石さんはもともとコンピュータで造形する技術を持っていた。〝手作業では作りだせない形が作れる〟と感じ、3Dプリンターのソフトも習得した。
「つなぎ目がなくて繊細なところが特徴ですね」と、3Dプリント作品ならではの魅力を教えてくれる。
「すべて二人のオリジナルデザインなんです。アイデアの検討からはじめ、3次元ソフトでデザインデータを作っています。機械を通した出力作業は海外で行っているんですよ」
お客様の声が日々の励み
〝どこかに新しさを〟という思いで作品を作り続け、コレクションは今や100種類になったそうだ。
「最初の1作目は、売れる作品に仕上げるまで試行錯誤を繰り返してました。2~3か月かかりましたね」
その作品は〝ユニーク!〟〝あまりないよね〟そういった言葉でむかえられたとのこと。
▲女性に人気のシェルイヤリング(左)。男性には蝶ネクタイ(右)が評判だとか。
4周年をむかえたモノサーカスさん。ここまで大変なことなどあったかと聞いてみた。
「そうですね、すごく大きなものはないんですけど。日々、壁でしょうか(笑)作品をひとつ作ると
〝やった!〟と思うんですけど、次の瞬間〝次の作品を生み出さないと〟って思ってしまうんで、途切れないんですよね」
同じことの繰り返しは避けたい、デザインは新しく。けれど使いやすさにもこだわりたい――。そんな二人の日々の励みになっているのがお客様のコメントだという。
「思いだせないほど、たくさんの声を頂いてきましたね。〝写真で見た以上に存在感がありますね〟とか」
形になったアイデアで、お客様に喜んでもらえる、ハッピーな気持ちになってもらえる、それがやりがいであり、楽しさでもあるのだと満足げに話してくれる。
「〝一つの事業はどんな形であろうとも10年はやってみる必要がある〟と、どなたかが言った言葉が印象に残っているんです。私たちはまだ4年目なので、1年1年着実に何か新しいことを吸収していけたらなと思っています」
2016年はどんなことに取り組むんだろうか。
「〝特別ご奉仕品〟を始めたのも2016年のトライですね。サイトで買ってくださる時って、写真やコピーが決め手ですよね。モノによって動画もありますが、できるだけ作品の雰囲気・ストーリーが伝わる工夫を加えていきたいと思っています」
もっと選びやすく、買いやすくなればいい……。お客様への思いが伝わってくる。
二人で考え、補いながら……
ものづくり作家さんと知り合う機会が多いけれど、二人チームを取材させてもらうのは初めてだ。チームだからこそのメリットってたくさんあるような気がして聞いてみた。
「どんなものを作るか――ここが大事。二人でアイデアを考え、補いつつ取り組める点でしょうか。学生時代から影響しあって、いろんなアートの話をしながらやってきましたから、お互いの思いもよく分かっていますしね」と武石さん。
こんなことも話してくれた。
「インテリアデザイン=壁、床、天井だけかな、なんて考えたりもするんです。棚も中もデザインしようと思えばできるんじゃないか、時間と技術があれば可能か、なんて。デザイナーというと、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナーなど様々いるけれど、てがける内容に関して線をひいているのはデザイナー自身だと思うんです」と。
自分の仕事に線を引いてしまうのは自分自身だと思う。そんな思いから
「モノサーカスは3Dプリント作品がメインですけれど、制限はしないように、インテリアやアート作品の制作、絵画など、依頼に応じて様々な仕事を行っています。シンも絵を描いたり、絵本の挿絵をやったりもしていますしね」
なるほど。サイトを拝見すると、絵画やパブリックアート、インテリアと建築など、お二人がてがける作品は幅広いようだ。
興味深い話がもうひとつ。
「たとえば、アート作品がギャラリーに展示され、購入されないと廃棄ということもあるんです。そういった現状に疑問を持ったりして。アート作品そのものが実用化されるやり方、市場にとりこまれる製品となるような……〝商品的なあり方〟への興味が二人とも常にあるんです」
〝制限しない〟〝線を設けない〟そして〝商品としてのアート作品〟を意識しているというモノサーカスさん。
様々な思いや葛藤がある日々も、二人だからこそ、チームだからこそ話しながら、ひとつひとつ答えを見つけながら進んでいけるんだろう。
これから、モノサーカスさんのようにチームを組む作家さんも増えてくるのかもしれないなあ。チームならではの魅力もたくさん教えていただきました!
プロフィール
モノサーカス。美大出身のアーティスト、リム・シンイーさんと東京芸大で建築を学んだデザイナー武石一憲さんから成るチーム。3Dプリンターを活用した商品開発ほか、絵画やパブリックアート、インテリアや建築など幅広く活動。商品販売はサイトがメイン。伊勢丹新宿店など東京・大阪を中心にイベント販売も行っている。
URL:http://monocircus.com/ja/
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