レシパーファイルvol.4 切り絵という日本の文化を 世界に向けて発信していきたい

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切れないものは、創作意欲だけ

いらないものを引く楽しさ、切り絵の「抜き」の姿勢に日本的な美学を感じ、切り絵作家として活躍しているキタノさん。「切れないものは創作意欲だけ」と、精力的に活動し、今年3月には初個展も開催した。

〝生命・存在〟をテーマに、生物をモチーフに、動き・筋肉などを流れのイメージでとらえ、優美な流線形を描いている。

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例えば、鯉。今にも絵から生まれ落ちてきそうなほど、動きが伝わってくる。「うまれおちる」という言葉も、丁寧に切り抜かれている。字面や発音も考え、言葉にもこだわり、絵に添えているのがキタノさんの特徴だ。また、展示方法や見せ方も趣向を凝らしている。照明もつけたり消したり、角度を変えたり、影も楽しんだり。薄い和紙の作品なら、風に揺れるように展示したり。さまざまなパフォーマンスで楽しませてくれる。

現在はアートイベントや展示・即売会などで活動し、ギャラリーから声がかかればグループ展を行ったりしているそうだ。

また、切り絵作家としての顔のほかにもうひとつ、「SAMURAI代表」という肩書きもある。

「いろんな切り絵作家さんでSAMURAIというグループを結成したんです。東京オリンピックが決まった瞬間に『団体でも頑張ろう』と。使う素材も表現方法も技法も違う作家さん達と刺激し合い、日本ならではの文化の価値を高めるぞ、そんな思いで結成し、代表を務めています」

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そんなキタノさんが切り絵作家の活動を始めたのは3年ほど前からだという。工業高校を出た後は建築設計の道へ進み、手がきで図面をひいていたそうだ。3年ほど両立してみたけれど、やはり難しいとの思いから、切り絵作家一本の道を選んだという。

「退職して丸一か月、家にこもって作品に取り組みました。真っ白い紙に絵を描いて。切り抜いて。一部分ずつ塗り、濃淡で立体をつけていきました」

そう説明してくれた切り絵「四季のひかり」は、2013年に国際切り絵コンクールで入選した作品だ。これまでの思い、切り絵で表現したいことを全部入れたというだけあって、圧倒的な存在感が感じられる。

「切り絵一本にしぼったのは、夢があるからです。僕にしか描けないものがあると。お客様の声も大きかったですね。『つきつめてほしい』『あなたにしかできない』って言ってくれたんです」

そんな言葉が背中を押してくれたようだ。

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