若い層にも買ってもらいたい
価格を下げる工夫も
現在、鳴瀬さんの作品の購入層は 50・60・70 代の女性が多いとのこと。メインターゲットの声を大事にしながらも、鳴瀬さんは「若い層にも買ってもらいやすいように」と値段を落とす工夫もされているそうだ。
「手間賃で計算していくとやはり高くなるんです。そこで、難しくない技法を用いるとかね、どうしたら安くできるかを考えています」
そんな話の中、見せてくれたのが「新商品開発ファイル」。素敵な絵とメモが記された小さな紙の束。ひとつではない。いくつも出てきて「こんなに!」と驚く。なるほど、こうやって絵のアイデアをためておくのだ。
「アイデア出しがね、一番大変なんですよ」と笑う。
思いついたら書き留める。文字と絵とメモ書きの束。たとえばネクタイのオーダーを受けたら、配色なども考えながら、図案を描いていく。ここまでで 70%が完成。そして染色だ。
数ある工程の中でも「絵を描く部分が一番楽しいですねえ」と話す鳴瀬さん。「絵の仕事をしよう!」と志した頃と思いは同じなのだろう。
求められているものを知る
工芸は売れなければダメ
昔は工房にお弟子さんもいたが、結婚などで辞め、今は奥さんと二人で切り盛りしているそうだ。
「今はね、教えるより作る方ですね。だから今は妻と二人です」
そう話しながら二階の作業場で〝ぼかし染め〟の作業風景を見せてくれた。床と平行にぴんと張った布に、はけで色をさあっとのせる。布を平行にしておかないと色が流れてしまう。慎重にかつ大胆に作業していく鳴瀬さん。眼鏡の奥に見える目は真剣そのものだ。
あっという間に白い布が美しい染色作品に生まれ変わった。「すごい!」と、職人技に感動した。
作業が一段落したところで、作っていく中でどんな時に喜びを感じるのか尋ねてみると「売れることが一番嬉しいですね」ときっぱり。
「芸術家は、〝死んでからでも認められたら〟っていうじゃないですか。でも工芸は仕事として売れないとダメなんです」と言い切る。
売るためにお客さんの声を聞き、何が求められているのか見極めることも大事だと話す。 「お客さんに気にいってもらえるようなものを作って売り場に持っていくんです。いかに好むものを作れるか。好まれるものがそこにあれば、会話が始まって売れるんですよね」
お客さんとのコミュニケーションも楽しさのひとつだと教えてくれた。
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